高齢者とサルコペニアの関係

「歳のせいもあるしねー。」
年配の方のパーソナルトレーニングをしていると、たまに出てくる、いや常套句ですかね、この言葉。

当然ながら、ヒトの筋力は加齢と共に低下することがわかっています。
例えば、膝関節伸展筋力は20歳頃から徐々に低下していくことがわかっており、60歳前後では若年者の約60%程度まで筋力が低下すると言われています。
そして、ヒトの骨格筋質量は加齢に伴う低下、いわゆるサルコペニアを引き起こすことでも有名です。
サルコペニアは、α運動ニューロンの数や筋線維数の減少、あるいは筋線維群の萎縮に伴う神経-筋の組織や形態学的な変化によって起こる筋減少症のことです。
特に筋線維数は60歳頃からその減少が進み、I型線維(遅筋)より II型線維で多く萎縮していきます。
一方で一部では、加齢に伴う筋力の低下はサルコペニアの量と関係がないとの報告もあり、加齢に伴う筋力の低下は神経系も深く関与すると考えられています。

力発揮時の変動の大きさは収縮様式や収縮強度、運動課題を遂行する際に含まれる筋群によって異なる。

ヒトの力発揮の正確性を評価する指標の一つとしては各収縮様式、つまり短縮性筋収縮、伸張性筋収縮、および等尺性筋収縮中の力調節安定性を評価するのが一般的です。
随意筋収縮中に発揮される力は決して一定ではないので、要求された力の大きさで変動していきます。
つまり力発揮時の変動の大きさは収縮様式や収縮強度、あるいは運動課題を遂行する際に含まれる筋群によって異なっていきます。
安定性は運動単位の動員パターン、運動ニューロンの発火頻度のバラツキ、Common drive (共有駆動)のような活動特性によって影響を受けることがわかっています。
高齢者は若年者と比べると、特に低張力発揮時、つまり微妙な力加減でというときの力調節安定性が低下すると言われています。
意外と最大筋力発揮はうまくコントトールできたりするものなんです。
実は筋力を含め、これら加齢に伴う神経-筋協応能の適応は、動作の巧緻性や日常動作能力の加齢による低下と関連してきます。

習慣的な運動介入は高齢者の神経筋機能を高めるのに有効である。

加齢に伴う神経-筋機能の低下は、継続的に運動を取り入れても明らかに認められるものです。
しかしながら、習慣的な運動介入は高齢者の神経-筋機能を高めるのに有効であると言われています。
そして、その例として挙げられるトレーニング法が負荷を用いた筋力トレーニング、パワートレーニングといわれるものになります。
この筋力トレーニングによって高齢者の筋力増加と共に日常動作能力が改善すること、力調節安定性が改善することが知られています。
筋の肥大や筋力の増加の程度は、トレーニング負荷に比例するといわれますが、高齢者には負担の少ない軽負荷筋力トレーニングでも筋力、力調節安定性、日常動作能力の改善の有効性が実証されていて、まずは継続的な筋力増強運動を行うことが大事というように考えられています。
このように考えると筋力をつけることが最大筋力を強くすることではなく、安定した力発揮能を備えるためにトレーニングを行うことに意味があるのです。

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