種々の姿勢の保持、多様な運動の遂行は、重力の関係で容易にも困難にもなります。
自己の姿勢や運動を感知する固有感覚、触覚や視覚の情報が中枢神経系で統合され、四肢と体幹の相互関係が重力とバランスをとるように、全身の筋緊張を調整する指令が出されます。
こうした重力に抗する自動的な筋活動により、静止姿勢、随意運動に伴う動的姿勢が保たれています。
抗重力機構による姿勢保持
これら抗重力機構による姿勢保持には、種々の調整機構が関与します。
例えば、直立位で体幹が前方に傾くと、下腿三頭筋は伸張反射により伸展されて収縮し、体幹を元の位置に戻します。
前傾が大きいと別の機構が働き、下肢屈筋の促通、伸筋の抑制が起こり、下肢を一歩踏み出します。
これは踏み直り反射によるものです。
類似した刺激でも、その強さや身体状況によって、異なる反射が働いてバランスを保ちます。
これらの反射機構は、無意識に統合されています。
こういった四肢伸筋の伸張反射は、姿勢保持の基本となります。
筋長の微小な変化に対しては、脊髄反射を介して筋緊張を調節しており、大きな身体の揺れは、平衡感覚や長経路反射によって調節されます。
また、上位中枢から脊髄への抑制性制御が消失すると、伸筋の筋緊張亢進、痙縮が起こります。
この減少は、抗重力機構の機能亢進でもありますが、バランス保持には役立ちません。
ほかの姿勢保持機構が正しく働くめには、抗重力機構も正しく機能することが重要です。
身体の運動時にみられる姿勢と平衡の保持の反射
外力に対する姿勢バランスの保持は、立ち直り反射や平衡運動反射、長経路反射によって行われます。
身体運動時のバランス保持には、静止姿勢時のバランス保持よりも複雑な反応が必要になります。
立位では、支持基底が狭くなり、身体運動で重心線は簡単に支持基底の外に出てしまいますが、この場合、静止姿勢を保つ姿勢反射の働きではバランスはとれずに転倒します。
姿勢のバランス安定性を維持する反応は、平衡運動反射、迷路加速反射、加速反射です。
これらはバランス反応とも呼ばれており、身体の運動時にみられる姿勢と平衡の保持の反射とされています。
この反射は、頭部位置の急激な変化で起こり、外力に対する代償を行います。
直線方向の加速度や回転方向の角加速度が前庭器への刺激となり、眼球運動や頭部と体幹、四肢の運動を起こす引き金となります。
反射中枢は延髄にありますが、上位中枢の制御を受けており、小脳の機能障害は、体幹バランスを不安定にします。
間脳や基底核、大脳皮質も、この反射が正常に機能するのに重要です。
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