昔から、老化の予防には運動といいます。
実際に、習慣的に運動している方は、日常生活動作や身体機能の改善などでその効果を体感していることでしょう。
マクロなレベルでみれば運動がもたらす老化予防は明らかですが、もっと根本的な細胞レベルでの老化に対しての効果についてはあまり解明されているとは言えません。
その中で、近年ではオートファジーやmTOR、テロメアなどがキーワードとなり、細胞の老化についてさまざまな研究がなされています。
テロメアの役割は染色体末端を保護すること。
テロメアとは染色体末端にある構造体で、染色体末端を保護する役割を担っています。
テロメアはテロメラーゼという酵素によって伸長されますが、ヒトの細胞ではほとんど働いていません。
そのため細胞分裂のたびにテロメアは短くなり、ある一定の長さを下回ると細胞は老化状態となり、最終的には細胞死が起こると考えられています。
つまりテロメアは歳を重ねるにつれて短くなり、これによる細胞の老化は、あらゆる老化現象と関係があるとされています。
ある研究で、被験者を、運動習慣の「ある若者」「ない若者」、運動習慣の「ある高齢者」「ない高齢者」の4つのグループに分けてテロメアの長さを比較したところ、若者のグループではほとんど差がなく、運動習慣のある高齢者グループでは若者より少し短く、ない高齢者グループでは極端に短いという結果が出ました。
さらに高齢者のグループを対象に有酸素運動能力とテロメアを調査したところ、有酸素運動能力が高い人ほどテロメアが長いことが分かりました。
このことから、有酸素運動によってDNAを実年齢よりも数十年も若く保てると考えることが出来ます。
テロメラーゼという酵素の働き
他の研究では780人の心疾患のある被験者を調査したところ、テロメアの長さが短い患者ほど4年以内の死亡率が高いことも分かっています。
また、テロメラーゼは、発見された当初この酵素によって長寿が可能になるのではと考えられました。
ところが動物実験で体内のテロメラーゼの濃度を上げるとがん発生の可能性が高くなることが判明しました。
現在は、がんのテロメラーゼ活性を抑制したり、テロメラーゼを発現する細胞を攻撃したりするがん治療薬などの研究が進められています。
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